フラッシュバット・
マンガンクロッシング
フラッシュバット・マンガンクロッシングの技術
鉄道業界の軌道設備に於いてマンガンクロッシングは、組立クロッシングの寿命を著しく改善する手段として価値を持っていましたが、前後レールとの接合の点で、今までその真価を発揮することが出来ませんでした。
今、鉄道業界の技術の進化による、車輌の高速化、過密ダイヤ化、鉄道会社間での乗り入れの増加など、分岐器には、さらなる高耐久性、保守作業省力化、騒音の低減化等の技術が求められています。
そのニーズに応えるのが、マンガンクロッシングにレールを溶接する、溶接脚付きマンガンクロッシング=フラッシュバット・マンガンクロッシングの技術です。
構成
フラッシュバット溶接
フラッシュバット・マンガンクロッシングは、マンガンクロッシングとレールをフラッシュバット溶接するもので、媒介にステンレス合金挿入材Maustinox®(モースティノクス)をクロッシングとレールの間に挿入します。特許材Maustinox®は、オーステナイト-フェライト組織を持ち、マンガン鋼とレール鋼双方への溶接が可能です。
レールとの溶接部のミクロ組織
溶接した部分の組織を拡大してみると、通常溶接する事が出来ないマンガン鋼と高炭素鋼が、モースティノクスを介す事により、完全に接合されている事が分かります。
2ステップによるフラッシュバット溶接
- STEP1
- モースティノクス挿入材とレールの溶接
挿入材とレールを溶接し、挿入材を切断します。
マルテンサイトの形成を防ぐために、溶接時に局部熱処理を施します。
尚、溶接するレールは普通レール、熱処理レール共に可能です。
- STEP2
- マンガンクロッシングとの溶接
モースティノクス+レールをマンガンクロッシングに溶接します。
効果
寿命延伸効果
通常(50N定尺)レールとロングレールの比較において、継目板使用の通常レールの交換は通過トン数4億トンであり、ロングレールでの交換は8億トンといわれています。
約2倍の耐久性向上
マンガンクロッシングの交換は通過トン数約2億トンです。交換理由は通常摩耗の他、継目落ちによる摩耗、破損が原因と考えられており、溶接マンガンでは、継目落ちが無いため、ロングレール並の耐久性が期待できます。
保守軽減効果<分岐器保守作業の軽減化>
-
分岐器の細密検査(1回/年)
レール、クロッシング、継目板、締結装置等、継目板解体作業が削減
材料の締結状態、損傷、劣化状態の検査 -
Cr継目部マクラギ交換(15年毎)
合成マクラギの寿命まで
交換の必要なし -
道床突き固め作業
(最大4回/年、平均2回/年)
クロッシング継目部
突き固め作業が削減 -
直線側リードレール、付帯レールの
継目落ちによる交換(5年毎)
レール交換作業が削減
挿入材の使用により、マンガンクロッシングとレールの硬度が滑らかに変化します。
騒音・振動の軽減
クロッシングとレールを溶接するため、継目部の騒音・振動が軽減されます。
世界での実績
フラッシュバット・マンガンクロッシングは、1989年にフランス・マノアインダストリーズ社が開発し、その技術はウトロー・テクノロジーズ社に引き継がれ、TGVが走行する分岐器にも採用されるなど、現在ではフランス国鉄を含め、ヨーロッパでは35,000台(2014年末)が敷設されています。